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大阪高等裁判所 昭和36年(ネ)80号 判決

大阪市西成区今池町四〇番地

控訴人

佐竹千代子

右訴訟代理人弁護士

水田猛男

被控訴人

右代表者法務大臣

植木庚子郎

右指定代理人検事

山田二郎

検事 杉内信義

法務事務官 松尾重彦

大蔵事務官 葛野俊一

大蔵事務官 山本楢治

頭書の事件につき、当裁判所は、次のとおり判決する。

主文

本件控訴を棄却する。

控訴人の金四、二四五、八五一円に対する昭和二六年一一月一日以降昭和三四年三月六日に至るまでの年五分の割合による遅延損害金の請求を棄却する。

当審における訴訟費用は控訴人の負担とする。

事実

控訴人は、「原判決を取消す。被控訴人は、控訴人に対し金四、二四五、八五一円及びこれに対する昭和二六年一一月一日から支払ずみに至るまで年五分の割合による金員を支払え。訴訟費用は第一、二審とも被控訴人負担とする。」との判決並びに仮執行の宣言を求め、被控訴人は、「本件控訴を棄却する。控訴費用は控訴人の負担とする。」との判決を求めた。

当事者双方の事実上の主張並びに証拠の提出、援用及び認否は、次に記載する外は、いずれも原判決摘示事実と同一であるから、これを引用する。

(控訴人の主張)

(一)  本訴請求の損害金のうち、控訴人主張の老舗の損害金五、〇〇〇、〇〇〇円を金三、〇〇〇、〇〇〇円に減縮し、かつ、本訴請求のうち、遅延損害金の起算日を昭和二六年一一月一日に変更する。従つて、請求の趣旨を前記控訴の趣旨第二項のとおり変更する。

(二)  西成税務署係員土肥米之の戸順調査は、昭和二三年一二月行われたもので、その調査の結果は、控訴人の昭和二四年度分の所得額の推定資料となり得るとするも、昭和二三年度分の所得額の推定資料とはならぬ。

(証拠関係)

控訴人は、甲第一五号証、同第一六号証の一、二、同第一七ないし第二二号証を提出し、当審証人佐竹長太郎の証言を援用し、被控訴人は、右甲号各証の成立を認めた。

理由

当裁判所は、控訴人の本訴請求は、不当であると判断するのであるが、その理由は、左記のとおり付加、訂正する外は、原判決摘示理由と同一であるから、これを引用する。

(一)  原判決一四枚目裏第一〇行の「一〇号証」の次に、「原審証人松谷理の証言」を、同一六枚目裏最終行の「控訴を棄却したことが認められる。」の次に、「前記甲第一号証の記載内容中、原告の主張として記載してある部分、成立に争のない甲第一五号証、同第一七ないし第二一号証の各記載内容、当審証人佐竹長太郎の証言中、右認定に反する部分は、いずれも前記各証拠に照して採用し難い。」をそれぞれ加え、同一七枚目表第六行より第七行の「明白である。」の次に、「前記甲第一五、第一七、第二一号証の各記載内容中、右西成税務署長において違法性を認識しながら故意に本件更正処分をなした如き記載部分は、いずれも原告の一方的主張に過ぎないから、にわかに採用し難く、他に右署長の故意の存在を認めるに足る証拠はない。」を加え、同一七枚目表第七行の「昭和二三度」を「昭和二三年度」と訂正し、同最終行の「あるが」の次に、「前記甲第一号証の記載内容中、原告の主張として記載してある部分、前記甲第一五、第一七ないし第二一号証の各記載内容中、右原告の主張に照応する記載部分は、いずれも原告の一方的主張に過ぎないから、にわかに採用し難く、原本の存在及びその成立につき争のない甲第一三号証(産業経済新聞)記載の塩見大阪国税局長の談話中、税務行政に関する部分は、たやすく採用できず、また、当審証人佐竹長太郎の証言中、原告に対する昭和二三年度分所得額の本件更正処分が何らの調査なしになされた旨の供述部分も採用できない。」を加え、同一七枚目裏第八行の「証人佐竹長太郎の証言」を「前記甲第二一号証、原審並びに当審証人佐竹長太郎の各証言」と改め、同一八枚目表第四行の「採用できず、」の次に「前記甲第一五、第一七、第二一号証の各記載内容中、原告の右主張に合致するが如き記載部分は、いずれも、原告の一方的主張に過ぎないから、にわかに採用し難く、」を加える。

(二)  原判決二三枚目表第二行の「的確な証拠もない」の次に「(右時価に関する原審並びに当審証人佐竹長太郎の各証言は、たやすく採用し難い。)」を、同二四枚目表第三行の「帰すことはできないと考える。」の次に「その他本件滞納処分につき、その違法性の認識において、右西成税務署長又は同署収税官吏に故意又は過失のあることを認め得る証拠はない。」をそれぞれ加える。

以上の次第であるから、控訴人の本訴請求は理由がなく、従つて、本訴請求のうち、後示新訴の部分を除いたその余の請求につき、これを棄却した原判決は相当であつて、本件控訴は理由がない。本訴請求のうち、金四、二四五、八五一円に対する昭和二六年一一月一日以降昭和三四年三月六日に至るまでの年五分の割合による遅延損害金の請求は、控訴人が当審において請求を拡張した新訴であるから、控訴裁判所である当裁判所は、事実上第一審としての裁判をなすべきであり、従つて、主文にその請求を棄却する旨を掲げるべきである。

よつて、民事訴訟法第三八四条、第九五条、第八九条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 安部覚 裁判官 藤原啓一郎 裁判官 古川実)

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